スポンサーサイト

Posted by steampump on

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

まちねこのなまえ。

Posted by steampump on   3 comments   0 trackback

onigiri_14_12_04_003.jpg

かつて、この街のとある横町におにぎりくんという名前の猫がいました。

おにぎりくんは頭の後ろにおにぎりの海苔にようなまあるい模様があったので、
それを見た街猫好きのおっちゃんが勝手におにぎりくんと呼び始めたのでした。

おにぎりくんは街猫ですから、彼を見る人によって名前は違っていました。

街猫は幾通りの名前を持ち、その名前が多い程街の人に可愛がられているのです。

おにぎりくんは人懐こく、
賢くて、
それはそれは可愛い猫でしたから、
街の人にとても愛された猫でした。

なので、おにぎりくんはきっとたくさんの名前を持っていたに違いありません。

おにぎりくんは横町の、そのまたビルの隙間にある木戸の奥で生まれました。

ほんの子猫のおにぎりくんは、
兄弟の猫耳くん(これまた猫好きが勝手に付けた名前です)と一緒に育ち、
やがて猫耳くんは優しい人にいつの間にかもらわれていきました。

兄弟の中でひとり横町に残ったおにぎりくんは、
それでものびのびと暮らしていました。

もちろん横町の方や街の方は思い思いに心を配っていたことは言うまでもありません

onigiri_14_12_04_002.jpg

そんなおにぎりくんに転機が訪れたのは去年の冬のはじめ頃でした。

初雪が降り始めた頃、おにぎりくんは酷い風邪をひいてしまいました。

風邪は家猫でも大変なことですが、
街猫にとって風邪は命にかかわる病気です。

横町のみなさんはおにぎりくんをお店に招き入れ、

やわらかくて暖かい寝床を用意し、

みんなで看病をしました。

それでもおにぎりくんの病気は良くなりませんでした。

おにぎりくんを可愛がっていた中の一人、

近所のマスターが「命には代えられない」と、

おにぎりくんを病院に連れて行きました。


病院に行ったおにぎりくんはいろいろな検査を受け、

おにぎりくんの病気の正体がわかりました。

おにぎりくんは白血病という病気でした。

白血病は恐ろしい病気で、
一度かかってしまうともう治らない病気なのだそうです。

心配した横町の人たちは話し合い、
おにぎりくんはある居酒屋のご夫婦の家に行くことに決まりました。

居酒屋のご夫婦は奥さんは猫アレルギー、
しかも猫を飼ってはいけないお家に住んでいましたが、
おにぎりくんのために猫を飼ってもいいお家に引っ越しました。

おにぎりくんは居酒屋のご夫婦の家がとっても気に入ったのか、
外に出たがることも無くご夫婦と仲良く暮らしたという事です。

ご夫婦もおにぎりくんをとても可愛がり、
不思議なことに奥さんが猫アレルギーになることも無かったそうです。

おにぎりくんはご夫婦の家で幸せに暮らしました。

onigiri_14_12_04_001.jpg




おにぎりくんのお話には続きがあります。

ちょと哀しいお話かもしれません。

とある日の夕方、
冬間近の街は既に暗闇が迫っていました。

小さい横町で街猫を見に来た猫好きのおっちゃんは、
暗闇の中で猫を呼ぶ影を見かけました。

それはおにぎりくんを病院に連れて行ってくれたマスターでした。

マスターは猫にあげるためのごはんのお皿を片手に持ち、
暗闇に向かって「ちっちっち…」と呼びかけていました。

暗闇から白黒の小さな猫とおにぎりくんと少し似ている猫が転がるように出てきました。

マスターはお皿を地面に置き、
時折猫たちの背中をなでながら、
低い声で何事か話しかけていました。

猫好きのおっちゃんはいてもたってもいられなくなり、
マスターに声を掛けました。

「この猫どうしてますか?」

それはおっちゃんの携帯電話の待ち受けの写真でした。

写真のおにぎりくんは真っ白な雪の中でおっちゃんを見上げていました。

マスターは写真に顔を近づけ、

そして少し哀しく微笑んだように見えました。

マスターの話はこうです。


ご夫婦に貰われていったおにぎりくん。

幸い白血病は安定してのんびり暮らしていましたが、

ある日おにぎりくんの身体に別の病魔が忍び寄っていました。

おにぎりくんの体が侵されていたのは癌でした。

おにぎりくんは程なく虹の橋へと昇って行きました。

居酒屋のご夫婦はたいそう落胆したと言います。

「あの子は人懐こくて可愛かったから…」

そういってマスターは自分の店に向かっていきました。

猫好きのおっちゃんは暗闇の空き地の隅で言葉を失っていました。

見上げるともう気の早い星々がキラキラと冬晴れの空に瞬いていました。

しばらくしておっちゃんの脳裏に少し不思議な感情が湧きあがりました。


街猫たちは、

たいていの場合、

人知れずいなくなり、

街にはいなかった事になる。

街猫は街にいるけど、

いなくても誰もおかしいとは思わない、

そんな存在なのかもしれない。

でもその街猫に名前をつけて…、

ひとりひとりが名前を付ければ、

街猫は街にいる猫になる。

おにぎりくんは街猫だった。

立派でとても賢い街猫だった。

いなくていい猫なんていない。

街に猫はいたって良いんだ。


おっちゃんは今日も街猫に会いに行きます。

出来る限りたくさんの猫と会って、

名前を付け続けます。

街猫を可愛がる人の数だけ、

街猫には名前が増えます。


だから…。

街猫の名前を呼んであげてください。

街猫に名前を付けてあげてください。

街猫は名前の数だけ、

きっと幸せになるんです。

スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。