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港猫 トロ箱のかあさんのこと

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港で猫と遊んでいたら、
釣りに飽きた小さな女の子が近づいてきた。

あっ、なでなでしてる!
ねぇ、お父さん!なでなでしてるよ!

少し向こうで釣りに夢中なお父さんが
「だめだよ~」っと、
釣竿の先を見つめながらカラ返事。

ねぇ、なでてもいいの?

ん?かまわないさ。
この子が嫌がらなきゃ。
やさしくしてあげてごらん。

できるよ!
ねこ触ったことあるもん。

そうかい。

ここにはいっぱいねこいるね。

そうだね。
どこかで猫見たかい?

あっちでトラ猫がいたよ。

そうかい。
黒いのは見なかった?

むこうの台の上に黒いのがいたよ。

そうかい、いたかい。
じゃあ、おじさんは黒いのに挨拶してくるよ。

女の子はもう目の前のサビトラに夢中になっていた。



その黒猫はやっぱりそこにいた。
誰かが置いた古いトロ箱に、
誰かが置いた古い毛布を敷いて
何年も前からずっとそうしていたように、
去年の秋にそうしていたように。
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よう、久しぶりだな。
「…」

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覚えてないかい?俺のこと。
「…知らないねぇ」

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ほら!去年の雪が降る前にさ、ここで会っただろ?
手のひら位のさカレイをあげたんだけどな。
「さあねぇ!…覚えてないねぇ…」

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そうかい?覚えてない?
「めんどくさい人間だね…。どれ、よーく顔を見せとくれ」

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どうだい?覚えてないかい?
「…」
寝ちゃダメだよ!起きてよ!

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「…ックシュ!クシュ!んばぁ。」
どうしたんだよ!

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「んばぁ!クシュッ!クシュ!」
なんだよ、風邪でもひいたのかよ。

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「分からないんだけどね、この季節になるとクシャミが止まらないんだよ。
たぶんあの白樺の樹からだね」
なんだよ!花粉症かよ。そいつは大変だね。
おや、お前、お腹が大きいんじゃないか?

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「フン!今頃お気づきかい?」
大丈夫かい?だいぶん大きいみたいだけど。

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「わかったような事をお言いじゃないよ。お産は病気じゃないんだよ。
 こちとらお産は慣れてるんだ。そこらの小娘と一緒にしないでおくれ」
なら良いけどな。おい!どこに行くんだよ。

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「言ったろう、お産は病気じゃないんだ。
少しの運動はかえってお産が軽くなるってね。
そこらを散歩してくるよ」
そんなもんかねぇ…。

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「さて、出かける前に…」

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「どこかの性悪ネコがこの場所を取っちまわないように…」

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「こうして匂いをつけておくのさ」

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「どっこらしょ…、さあ、そこをどいとくれ」

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トロ箱のかあさんは港を行ったり来たりしながら、
釣り人からおすそ分けを貰って暮らしている。
夏の初め頃には、たぶん子猫が生まれているだろう。



おじさん、ねこいた?

さっきの女の子。

ああ、いたよ。
ほら、あそこの黒いネコ。
お腹に赤ちゃんがいるんだよ。

知ってるよ!
わたしのお母さんもニンシンしてるんだって。
もうすぐ赤ちゃんが生まれるんだって。
お父さ~ん、クロちゃんニンシンしてるんだって!
赤ちゃん生まれるんだって!
お母さんと同じだね~。

海は凪いでいた。
日差しはまだ弱い。
あの女の子がお姉ちゃんになって、
黒猫が再び母になる頃には、
この港にも暖かい良い風が吹くだろう。

その頃には黒猫の花粉症も、
少しは良くなっているかな。

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ヨレヨレのこと

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 古い倉庫の脇で丸い頭にぴょこんとふたつ
 こっちを見ているネコを見つけた。

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 そのネコの首には奇妙なものがぶら下がっていた。
 なんだろう?近づいてみる。

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 もうちょっと、近づいてみる。
 ん?なんだか赤いぞ。

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 もう少しだけ、近づいてみる。
 あれ?アレはなんだっけ?

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 もう少しだけ、近づいても良いかい?
 お前、それはいったいなんなんだい?


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 ネコはこちらを見据えたまま。
「…」


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 良し!分かった。
 腹を割って話そうじゃないか。
「…」


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 お前、それ蝶ネクタイじゃないか。
 なんでそんなもの着けているのさ。
「…」


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 なんだよ、そっぽを向くなよ
「…知らないよ、そんなこと」


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 え?なんだって?
「…が、勝手に着けたんじゃないか」


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 え?誰が着けたって?
「…だから、お前達が着けたんじゃないか」


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 まぁ、そりゃあそうだけどさ。
 窮屈じゃないのかい?
「…別に窮屈じゃないよ」


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 なんだかブラブラしているね。
「…もう慣れた」


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 結びなおしてやろうか?
「…放っといてくれよ」


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 …。
「…」


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 …。
「…ぶらぶらしてたら可笑しいか?」


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 いや、似合っていると思うよ。
「…なら良いけど」


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 どこ行くんだよ。
「…」


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 …。
「…やっぱり可笑しくないか?これ」


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 可笑しくないよ。似合っているよ。
「…なら良いけど」


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 おい!どこ行くんだよ。
「…ならいいや。さいなら~。」




港の倉庫脇で赤い蝶ネクタイをした黒猫と出会った。
黒猫が飼い猫なのか外猫なのか分からないけど、
なんとなく外猫かなと思う。

赤い蝶ネクタイは首のところでブラブラしていて
なんだかヨレヨレだった。

なんだかヨレヨレだったけど、
なんだかとっても似合っていて、
港町の埠頭にいるネコとして、
とってもふさわしい格好に見えたんだ。

名なしの港猫茶トラのこと

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今日はどうも潮の匂いが濃いな。
それにさっきから海風が吹いている。
こういう日は決まって夜は雨さ。
今日は早めに仕事を片付けなきゃならないね。
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おや?そこでカシャカシャやっているのは誰だい?
ふん…あんたたち人間はそうして時々その機械…カメラっていうんだっけ?
そのピカピカした丸いので、あたし達の姿を写しているんだってね。
まるで片目の猫だね。
昼間なのにまん丸な目だなんて、滑稽なもんさ。
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そんなことしてて面白いのかい?
まぁ、好きにしたらいいけどさ。
さぁ、あたしゃ昼寝の時間さ。
失礼させてもらうよ。
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そこに居るのはさっきの人間だね。
また、あたしの昼寝ね邪魔をしに来たんだね。
まったく無遠慮な男さ。
あんたがオス猫だったらこの前足でどやしつけてやるところだよ。

まぁ、いいや…こっちに来るかい?
普段はあんたたち人間とは不用意に近づくもんじゃないんだけどね、
今日は特別さ。
ここは涼しくていい場所なんだ。
波の音も聞こえるしね。
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ふん、またそんなものカシャカシャしているね。
飽きもせずにさ。
まあ、いいよ。
好きにしなって、さっき言っちゃったからね。
あたしゃ、一度言ったことは守る事にしているのさ。
ま、あんなこと言っちまったことを今は後悔はしているけどね。
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あんたたち人間と、あたしら猫は大昔から一緒に暮らしてきたんだったね。
あたしのおばあさんからもそんな話をよく聞かされたっけ。
おばあさんが、そのまたおばあさんの、そのずうっとおばあさんから聞いた話さ…。

昔この港は今よりももっと小さかったけど、
真っ黒に日焼けした船乗りや、この地を治めに来た役人、
一儲けしに来た商人や、それにくっ付いてきた女達、
ここで一旗あげようとしに来た開拓民、
道路や港や鉄道を造るためにこの地に連れてこられた罪人なんかが、
ここいらをたくさん行ったり来たりして、そりゃあにぎやかだったって。
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あたしらの祖先もそいつらに連れてこられたって訳さ。
100年と少し前、ここいらはまだ草っ原と荒れた土地と山しかないところだった。
まだ、クマやらなにやら野蛮な動物がたくさん居たんだそうでね。
そりゃあおっかないところだったそうだよ。

この土地には元々彫りの深い顔をして、刺青をした人間が住んでいたんだ。
その人たちは自分達のことをアイヌと言っていたそうだがね。
もっともアイヌってのは人間って意味だそうだから、
あんたもあの人たちに言わせりゃアイヌさ。

アイヌはあたしら猫のことを”チャペ”って呼んでいたんだ。
少し南の方じゃ”エルムコイキ”なんて言ってもいたそうだがね。
そこらじゃネズミのことを”エルムン”って言ったそうだから、
あたしらのことはネズミ捕り位に思っていたのかもしれないね。
もっともアイヌは狩りをして生活していたから、
もっぱら犬と共に暮らしていたようだがね。

ただ、アイヌたちは自然や生き物全てに神様が宿っているって信じていたから、
あたしらの先祖もそれなりに大事にされたのかもしれないね。
秋の季節になるとあの大きな鮭をあたしらにもわけてくれたって。
あぁ、あたしも神様が迎えにくるまでにゃあ、
あの大きな鮭に食らいついてみたいもんだねぇ。

やれやれ、おしゃべりが過ぎた。
今日はどっかの誰かに昼寝の邪魔ばかりされているよ。
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おやおや、今日はどうも潮周りがおかしいね。
季節外れの低気圧のせいだね?
嵐を避けて小魚が岸に寄ってきたようだよ。
そうなったら話は別さ。
さ、仕事を始めるよ。
ついてくるって?まぁ、好きにしなよ。
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本当に来たんだね。
全く人間ってのは遠慮を知らないね。
あたしらだって釣れてない人間の後ろには付かないもんだよ。
ツイてない時に誰かにうろうろされるのは嫌なもんさ。
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まあいいや、そんなにそこに居たいなら、
あたしらの仕事を良く見ておくんだね。
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その前に…こうして身だしなみを整えてと…。
あたしら港猫は粋にしてなくちゃいけないからね。
それがあたしら港猫のしきたりだからね。
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さぁ来た。
こうして魚をゴチになるのも悪くないね。
あたしゃ気前のいい人間は大好きだよ。
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夏場の活きのいい小魚は格別だね。
冷たい魚が喉を通る感触はなんとも言えないよ。
夏の海はこれがあるからやめられないねぇ。
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おっと!こうしている間にも次々魚が釣れているみたいだね。
ぼやぼやしてられないよ。
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急がないとおまんまの食い上げさ。
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魚が釣れてる時間は短いよ。
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仲間も必死なんだよ。
さあ忙しくなってきた。
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やれやれ今日もなんとか生き延びたね。
釣れる日もありゃ、釣れない日もある。
こうしておまんまを頂戴できる日は
お日様が出てる日みたいに幸せなことさ。
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おや、不思議そうな顔をしているね。
いつも呑気にしている様に見えるんだろ。
そりゃあ気楽にのんびりしている時もあるけどさ、
そればっかりじゃ生きていけないよ。
これでもあたしらは生きていくのに必死なんだよ。
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さぁ、これからは夜の時間さ。
おさだまりの夜釣りの釣り人のお相手と、
ほら…そこに見える船、船乗り達もあたしらのお得意さんさ、大昔からのね。
あたしら猫はあんた達人間と違って夜目が利くからね。
そう、この両方の瞳を丸くさせてさ。

あんたもせいぜいがんばるんだね。
その片目のネコみたいなカメラでね。
あたしゃ、これで失礼するよ。
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広い埠頭の隅っこ。
めったに釣り人も来ないような場所に置いてあるホイールローダーのバケットの上で
目を閉じて潮騒を聞いていた港猫の茶トラ。

釣れる時間を敏感に察知してどこからかやってきて、
機敏な動きで釣り人の放る小魚を手に入れていた。
居ないなと思ったら居心地のよさそうな日陰で昼寝をきめこんでみたりと神出鬼没。

しばしの間、波の音を聞きながら、潮のにおいのする夏の風にあたって過ごした。

彼女は(勝手に彼女にしてしまったが実は性別不明)昼間の釣り人のお相手が済んだと思ったら、
今度は夜は船乗りの相手と忙しそうだった。
その昔、開拓時代も行き交う人たちと猫はこうして暮らしていたのかもしれない。

見上げれば宵の明星がまたたく時間。
この夜空はその時代から変わらないんだろう。
茶トラはいつの間にか宵闇に消えてしまった。

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